2015年10月5日にHDMI Licensing, LLC.によって「プレミアムHDMIケーブル」と呼ばれる新たなケーブルの「Certification Program(認証プログラム)」の仕様がリリースされました。
ニュースリリース記事(外部リンク:英文)

「プレミアムHDMIケーブル」には、2種類のケーブルが存在します。

・Premium High Speed HDMI Cable
・Premium High Speed HDMI Cable with Ethernet

この「プレミアムHDMIケーブル」の認証プログラムは、正式なHDMIのケーブル・カテゴリーではありません。
HDMIに既に加盟している企業が任意でプログラムに参加出来る仕組みになります。

参加表明企業のリスト(外部リンク:英文)

HDMI Licensing, LLCによる発表内容

「プレミアムHDMIケーブル」のリリースに伴い、HDMI Licensing, LLC.では「4K/Ultra HD(UHD)コンテンツや対応機器の増加に合わせて、対応ケーブルをより判別しやすくすることが狙い。」としています。
ニュースリリース記事(外部リンク:英文)

しかしながら、HDMI規格「HDMI2.0b」のリリースにあたっては、「HDMI 2.0bでは新たなケーブルやコネクターを制定することはない。既存のハイスピードケーブル(カテゴリー2ケーブル)は増加した帯域を伝送することが可能である」ともしています。
リリース記事(外部リンク:英文)

文脈をそのまま読み取ると、「いままでのハイスピードケーブルで問題なく使用できる」と、読み取れますが、実はこれには「落とし穴」があります。

「既存のハイスピードケーブル(カテゴリー2ケーブル)は増加した帯域を伝送することが可能である」としていても、「全ての」とまでは言及していません。

HDMIケーブルのテスト認証機関であるATC(Authorized Test Center)では、ハイスピードケーブルのテストに際して「最低340Mcsc」の「TMDS Character Rate(映像や音声データの転送速度)」を基準のひとつとして設けています。ハイスピードHDMIケーブルでは、ケーブル全体が保有する最低帯域幅は「10.2Gbps」になります。

そして「プレミアムHDMIケーブル」では、「最低600Mcsc」の「TMDS Character Rate」を基準として設けており、ケーブル全体が保有する最低帯域幅は「18Gbps」になります。


両者ともに「最低◯◯」を基準としているため「ハイスピードHDMIケーブル」によっては、「プレミアムHDMIケーブル」が指定する基準の伝送能力を満たすケーブルも存在する(可能性がある)わけです。

「18Gbps」とは?

そもそもプレミアムHDMIケーブルで語られる帯域幅「18Gbps」は何を意味するのでしょうか?
この帯域幅は、ブルーレイ・プレーヤーなどのソース機器とテレビなどのシンク機器間を伝送する「HDMIケーブル」内を通過するデータの許容量を意味します。
ちなみにHDMIのデータ伝送には「TMDS」と呼ばれる技術が使われています。
TMDS(Transition Minimized Differential Signaling)について

「18Gbps」の場合、毎秒18ギガ・ビットのデータの伝送が可能であることを意味します。

以下が広く一般的に採用されている「フル・ハイビジョン」と「4K」の帯域幅などをあらわした表です。
(RGB もしくは YCbCr 24ビットの場合の値になります。)

Video Format Active Total TMDS Data Rate
Frame
Rate
(Hz)
H
(pixel)
V
(line)
H
(pixel)
V
(line)
TMDS
Ch Rate
(Mcsc)
Total
(Gbps)
per Ch
(Gbps)
1080p 4:4:4 24 1920 1080 2750 1125 74.25 2.2275 0.7425
4K UHDTV 4:4:4 24 3840 2160 5500 2250 297 8.91 2.97
DCI 4K 4:4:4 24 4096 2160 5500 2250 297 8.91 2.97
1080p 4:4:4 60 1920 1080 2200 1125 148.5 4.455 1.485
4K UHDTV 4:4:4 60 3840 2160 4400 2250 594 17.82 5.94
DCI 4K 4:4:4 60 4096 2160 4400 2250 594 17.82 5.94
「18Gbps」は、いずれの「4K」の場合において想定される「Total TMDS Data Rate」の値(最大で必要なデータ量)「17.82Gbps」を伝送できるかどうかという点から謳われています。

ちなみにHDMIではサブ・サンプリングと呼ばれる技術によって、表示解像度はそのままに帯域幅を少なくすることが出来ます。
サブ・サンプリングについて

プレミアムHDMIケーブルのメリット

プレミアムHDMIケーブルのメリットは、以下の2つです。

  • 「18Gbps」の伝送を前提に製作されている
  • トレーサビリティーの保証

従来のHDMIケーブルでは、「正規品」の判断ができませんでした。
「正規品」とは、本来HDMI加盟メーカーがHDMIのレギュレーションに則して製作した製品のことを指します。
たくさんの模造品やレギュレーションに反しているケーブルが市場において販売されていることも事実です。

このような事情もあり、プレミアムHDMIケーブルでは製品への「QRコード」の添付が義務付けられています。
それらのQRコードをスマホのアプリなどで、その製品が正規品かどうか簡単に調べることが出来ます。


 

プレミアムHDMIケーブルのデメリット

2017年3月現在、プレミアムHDMIケーブルのデメリットは特にありませんが、HDMI 2.1のリリースに際して発表された「48G ケーブル」がリリースされた場合、ケーブルを買い換える必要性がでてくるかもしれません。