HDMIケーブルは「様々な名称」で販売されていることが消費者にとって解りづらくさせていると思います。
ここではHDMIケーブルの種類を出来る限り「正式な名称」を用いた上で分かり易く説明します。

まずHDMIケーブルの「種類」は7種類存在しますが、HDMIの規格上制定されているものは5種類です。

2017年3月現在、HDMI規格において正式に存在するケーブルタイプは5種類のみです。

規格上制定されているHDMIケーブルタイプ

HDMI規格において正式に決められているケーブルタイプの名称は以下の5種類です。

・Standard HDMI Cable(標準HDMIケーブル)
・Standard HDMI Cable with Ethernet(イーサーネット対応標準HDMIケーブル)
・Standard Automotive HDMI Cable(自動車用(標準) HDMIケーブル)
・High Speed HDMI Cable(ハイスピードHDMIケーブル)
・High Speed HDMI Cable with Ethernet(イーサーネット対応ハイスピードHDMIケーブル)

これらのケーブルタイプは、ケーブル本体の側面に印字されていたり、コネクタ部分に記載されています。
以下のようなラベルがパッケージもしくは本体に添付されている場合もあります。

HDMI cable lebels

HDMIの追加認証プログラム

2015年10月5日にHDMI Licensing, LLC.によって「プレミアムHDMIケーブル」と呼ばれる新たなケーブルの「Certification Program(認証プログラム)」の仕様がリリースされました。
「プレミアムHDMIケーブル」には、以下2種類のケーブルが存在します。

・Premium High Speed HDMI Cable(プレミアム・ハイスピードHDMIケーブル)
・Premium High Speed HDMI Cable with Ethernet(イーサーネット対応プレミアム・ハイスピードHDMIケーブル)

なお、この「プレミアムHDMIケーブル」の認証プログラムは、正式なHDMIのケーブル・カテゴリーではありません。
HDMIに既に加盟している企業が任意でプログラムに参加出来る仕組みになります。
プレミアムHDMIケーブルについて

「プレミアムHDMIケーブル」には、製品のパッケージに以下のようなステッカーが添付されています。

HDMI Premium Cable Label

レギュレーションなどによるHDMIケーブルの変遷

2002年にHDMI規格の初版である「バージョン1.0」が策定されて以来、不定期に規格改定がなされてきました。
HDMIバージョンの変遷

しかしながら、ケーブルに関して知っておくべき規格は「バージョン1.3」、「バージョン1.4」と「バージョン2.0」の「3つ」のみです。そしてHDMI Licensing, LLC.が発表したケーブルに関しての2件のプレスリリースも知っておく必要があります。
それぞれの主な内容を以下に抜粋します。

HDMI規格の変遷

バージョン1.3(2006年6月22日)

2つのケーブルカテゴリーの制定(標準、ハイスピード)
コネクター「タイプC」

バージョン1.4(2009年5月28日)

HEC(HDMI Ethernet Channel)
ARC(Audio Return Channel)
3D サポート
4K サポート (30Hzまで)
コネクター「タイプD」と「タイプE」

バージョン2.0(2013年9月4日)

HDMIにおける最大帯域幅を18Gbpsへ変更
4K サポート (60Hzまで)
アスペクト比 21:9

HDMIケーブルに関するプレスリリース

バージョン表記の禁止(2012年1月1日)

HDMIケーブルへのバージョン表記の記載が禁止。
HDMIケーブルへのロゴ、「ケーブルタイプ」の記載ルールの制定。
リリース記事(英文)

プレミアムハイスピードHDMIケーブル(2015年10月5日)

「プレミアムハイスピードHDMIケーブル(Premium High Speed HDMI Cable)」という「認証プログラム」がつくられました。しかしながら正式なケーブルタイプではありません
ニュースリリース記事(英文)

HDMIケーブルの分類項目

5つの「ケーブルタイプ」と「プレミアムHDMIケーブル」がどのような基準によって分類されるかを説明します。
まず冒頭の「ケーブルタイプ」は、マーケティング用の名称になります。
これらは「販売用」の名称であり、規格上の名称ではありません。
HDMIケーブルは規格上「カテゴリー」で分類されています。

HDMIケーブルタイプの分類項目
  • 1.ケーブル(ケーブルアセンブリー)のカテゴリー
  • 2.コネクター(カタチ)の種類
ケーブルアセンブリー(Cable Assembly)は、末端にプラグまたはコネクタが取付けられたケーブル加工品(一般的に言う「ケーブル全体」)のことを指します。

ケーブルアセンブリーは、5つの部分から構成されます。
・2つの「コネクター」
・コネクターを結ぶ「ケーブル」
・コネクターとケーブルを接続する2つの「接合部分」

hdmi_cable_construct
「コネクター」は規格上5種類存在しますが、これについては後述します。

組み合わせとして単純に計算すると
5(片側のコネクタ種類)×5(反対側のコネクタ種類)×5(ケーブルのカテゴリー)=125
125通りものケーブルが存在するかのように思われますが、実はそうではありません。
規格上は策定されていても一般的に流通していない組み合わせも実は存在するからです。

1.ケーブルアセンブリーのカテゴリー

ケーブルアセンブリーは5つのカテゴリーに分類されます。

・カテゴリー1(Category 1)
・カテゴリー2(Category 2)
・HEAC対応カテゴリー1(Category 1 with HEAC)
・HEAC対応カテゴリー2(Category 2 with HEAC)
・自動車用カテゴリー1(Category 1 Automotive)

下図はHDMIケーブルの分類項目における相関図です。

ケーブルアセンブリー ケーブルコネクター マーケティング名称
カテゴリー1 Type A – Type A
Type A – Type C
Type A – Type D
Type C – Type C
Standard HDMI Cable
カテゴリー2 Type A – Type A
Type A – Type C
Type A – Type D
Type C – Type C
High Speed HDMI Cable
HEAC対応カテゴリー1 Type A – Type A
Type A – Type C
Type A – Type D
Type C – Type C
Standard HDMI Cable with Ethernet
HEAC対応カテゴリー2 Type A – Type A
Type A – Type C
Type A – Type D
Type C – Type C
High Speed HDMI Cable with Ethernet
自動車用カテゴリー1 Type E – Type E (車載機器メーカーのみ)
Type E – Type A(メス)
Type A – Type A Standard Automotive HDMI Cable
HDMIは「ライセンス販売」という形態をとっているため、HDMI製品を製造し販売するにあたり規定の機関にて試験をする必要があります。例えばケーブルの場合メーカーはまずこの「カテゴリー」毎にテスト機関へ申請する必要があります。「カテゴリー」によって試験内容や費用が異なります。
「カテゴリー1」と「カテゴリー2」の違い

「カテゴリー1」と「カテゴリー2」の違いは、試験時におけるケーブルが保有する(最低)帯域幅になります。

カテゴリー 最低帯域幅(TMDS Character Rate)
カテゴリー1 2.25Gbps(74.25Mcsc)
カテゴリー2 10.2Gbps(340Mcsc)
プレミアムHDMIケーブル 18Gbps(600Mcsc)
この部分だけで考えると、「カテゴリー1」よりも帯域幅が広い「カテゴリー2」が、「カテゴリー2」よりも「プレミアムHDMIケーブル」が優れていると思われるかもしれませんが、必ずしも後者が前者よりも優れているということではありません。
仮に「カテゴリー2」に合格したケーブルを「カテゴリー1」として申請した場合、そのケーブルは「カテゴリー1」として販売することもできるからです。
つまりこのカテゴリーは、ケーブルメーカー側が試験をするときの申請基準(最低ライン)を表したものです。

(注)試験では「最低基準」のため、ケーブルがこれらのカテゴリーに分類されたからと言って必ずしもこの数値までのポテンシャルしかないわけではありません。
Bandwidth difference by HDMI categories

HEAC

「HEAC」とは、「HDMI Ethernet and Audio return Channel」の略称です。

2009年にリリースされたHDMI規格「バージョン1.4」において「HEC(HDMI Ethernet Channel)」と「ARC(Audio Return Channel)」のオプション機能が追加されました。これら2つを合わせて「HDMI Ethernet and Audio return Channel」、「HEAC」と呼ばれています。

HEC(HDMI Ethernet Channel:HDMI・イーサネット・チャネル)

ブルーレイ・レコーダーや液晶テレビなどにはインターネット接続を想定しているサービスがあります。
例えば、インターネット動画の視聴や出先からの録画予約などがありますが、このようなサービスを利用する場合、インターネット接続用にEthernet(イーサネット)端子(LANケーブルなど)をそれぞれの機器に接続する必要があります。(無線の場合は不要)
hdmi_cable_without_hec

HEC対応のHDMIケーブルを用いることで、例えばブルーレイ・プレーヤーを介して液晶テレビなどへEthernet信号を送信することが可能です。なお、転送速度は最大100Mbpsとなります。
hdmi_cable_with_hec
(注)この機能を使用する場合、ブルーレイ・プレーヤーと液晶テレビのHDMIポートがそれぞれ「HEC」に対応している必要があります。
ARC(Audio Return Channel:オーディオ・リターン・チャネル)

HDMIは映像信号と共に音声信号も伝送します。通常はブルーレイ・プレーヤーなどから液晶テレビなどへ伝送されます。このARCは、さきほどの流れとは逆方向にテレビなどからAVアンプやサウンド・バーなどの機器へ音声信号のみを伝送する機能です。通常のHDMI信号とは反対方向へ音声信号を伝送するため、「オーディオ」を「リターン」するという意味合いで名付けられています。

例えばブルーレイ・プレーヤーと液晶テレビを直接繋いだ場合、ブルーレイ・プレーヤー再生時もテレビを視聴する時も、音声はテレビのスピーカーから出力します。
audio_direct_connection

それではブルーレイ・プレーヤーと液晶テレビの間にAVアンプが介在する下図のような場合
audio_indirect_connection_01
ブルーレイ・プレーヤーを再生するとAVアンプに接続されたスピーカーから音声が出力されます。
audio_indirect_connection_02
しかしテレビを視聴する場合、音声はテレビから出力されます。
audio_indirect_connection_03
テレビを視聴するときもAVアンプに接続されたスピーカーから音声を出力したい場合、別途テレビとAVアンプを「光デジタルケーブル」などで接続する必要があります。
audio_indirect_connection_04
もしテレビとAVアンプがARCに対応している場合、「ARC対応HDMIケーブル」を用いることでテレビ視聴時もAVアンプに接続されたスピーカーから音声を出力することができます。
audio_return_channel

2.コネクターの種類

HDMIケーブルのコネクターは規格上、「タイプA」〜「タイプE」と呼ばれる5種類が存在します。

hdmi_connectors_variation

コネクタの種類

※図面内の寸法は、規格上の基準値(交差があります)です。

タイプA

HDMI タイプA コネクター(プラグ)

流通量が圧倒的に多いためこのコネクターが「HDMI」の代名詞のようになっていますが、正しくは「タイプA」と呼ばれます。

タイプB

HDMI タイプB コネクター(プラグ)

もともとはHDMIの規格が制定された際にDVIのデュアルリンクと同等の信号に対応できるよう策定された規格です。
この規格のみ「19ピン」ではなく「29ピン」あります。
実物のリリースは未だにありません。しかも「19ピン」のみでの4K伝送も可能となり、今後も流通する可能性は極めて低いものと思われます。

タイプC(別名:ミニ)

HDMI タイプC コネクター(プラグ)

主にカメラ、ビデオカメラ、ノートパソコンなどサイズの小さな機器との接続に使用されます。

タイプD(別名:マイクロ)

HDMI タイプD コネクター(プラグ)

主に携帯電話(スマホ)、タブレット、ノートパソコンなどの機器との接続に使用します。「タイプC」よりも後に発表された規格にも関わらず、そのサイズの小ささゆえ「タイプC」より「タイプD」を搭載した機器が増えています。

タイプE

HDMI タイプE コネクター(プラグ)

車載用機器を接続するために策定されました。ラッチ機構になっていて振動などによる抜け落ち対策が施されています。