2009年5月28日にリリースされたHDMI規格「バージョン1.4」において「ARC(Audio Return Channel:オーディオ・リターン・チャネル)」と呼ばれるオプション機能が追加されました。
製品が「ARC」に対応している場合は、「ARC」もしくは同時期にリリースされた「HEC(HDMI Ethernet Channel)」と合わせて「HEAC」と記載されることもあります。

ARCの概要

HDMI規格におけるARCは「IEC60958-1」で定義されているデジタルオーディオ信号(SPDIF)によって、シンク機器(液晶テレビなど)からソース機器やリピーター機器(AVアンプなど)に伝送されることをいいます。
HDMIでは映像信号と共に音声信号も伝送します。
通常はブルーレイ・プレーヤーなどから液晶テレビなどへ伝送されます。
このARCは、さきほどの流れとは逆方向にテレビなどからAVアンプやサウンド・バーなどの機器へ音声信号のみを伝送する機能です。通常のHDMI信号とは反対方向へ音声信号を伝送するため、「オーディオ」を「リターン」するという意味合いで名付けられています。

2つのモード

ARCには、「Common Mode(コモンモード)」と「Single Mode(シングルモード)」の2つのモードが存在します。
いずれのモードで接続するかはシンク機器のEDIDによって識別されます。

2つのモードは、通信の方法に相違があり性能の違いはありません。
コモンモード

コモンモードでは、「HEAC+」と「HEAC-」の2つのラインを用いて伝送します。
コモンモードでは、HEC信号も同時に伝送することができます。

シングルモード

シングルモードでは、「Utility(ユーティリティ:HEAC+にあたる)」ラインのみを用いて伝送されます。
※ケーブルによっては、14番ピンが結線されていないものも存在するため、その場合は使用できません。

ARCによってできることの例

従来、テレビとAVアンプを接続する場合「光デジタルケーブル」などを接続してテレビの音声をAVアンプなどへ供給していましたが、全ての機器が「ARC」に対応している場合、既に接続されている「ARC対応」のHDMIケーブルのみで、他のケーブルを接続することなく実現することができます。

・テレビ番組を視聴する場合にAVアンプ経由で接続されたスピーカーから出力する
・Netflix、huluなどのインターネット動画配信サービスを視聴する場合にAVアンプ経由で接続されたスピーカーから出力する

例えばブルーレイ・プレーヤーと液晶テレビを直接繋いだ場合、ブルーレイ・プレーヤー再生時もテレビを視聴する時も、音声はテレビのスピーカーから出力します。
audio_direct_connection

それではブルーレイ・プレーヤーと液晶テレビの間にAVアンプが介在する下図のような場合
audio_indirect_connection_01
ブルーレイ・プレーヤーを再生するとAVアンプに接続されたスピーカーから音声が出力されます。
audio_indirect_connection_02
しかしテレビを視聴する場合、音声はテレビから出力されます。
audio_indirect_connection_03
テレビを視聴するときもAVアンプに接続されたスピーカーから音声を出力したい場合、別途テレビとAVアンプを「光デジタルケーブル」などで接続する必要があります。
audio_indirect_connection_04
もしテレビとAVアンプが「ARC対応」であった場合、「ARC対応HDMIケーブル」を用いることでテレビ視聴時もAVアンプに接続されたスピーカーから音声を出力することができます。
audio_return_channel